入梅の気配が近づいた5月下旬の土曜日、船橋にある西尾邸をお訪ねしました。
都心からも程近く、JRや私鉄が乗り入れる利便の良い船橋です。土曜日の昼下がり、船橋の駅前はたくさんの人で賑わっています。すっかり近代化され、商業用ビルやマンションが建つ中で、アサリ売りの露店が目を引きます。昔の面影が残る商店街を数分歩いた通り沿いに西栄ビルは建っています。1階と2階が貸店舗、3階がご自宅となる、クリーム色の明るい外観が瀟洒な印象の西栄ビルです。
ここ西尾邸には、取材の翌日に喜寿のお誕生日を迎え77歳になられる西尾さんがお住まいです。この日は、西尾さんと西栄ビルの建築主でもある甥の英夫さんにお話を伺いました。
「船橋は漁師町として栄えてきた場所です。以前は高層ビルが建つなんて考えられませんでしたが、時代の流れとともにビルやマンションが目立つようになりました。同時に土地を売って引越して行く人が増え、昔から残っている人はこの近所にも少なくなりました。」と、ここで生まれ育ちずっと船橋の町を見てきた西尾さんはおっしゃいます。
西栄ビルが建っているのは、西尾家が代々受け継いできた土地です。バブル期には、土地ブローカーから高額での買取り話を持ちかけられたこともありました。「先祖代々の土地ですから、売ることは全く考えませんでしたし、ビル建設に慌てる必要もありませんでした。」と英夫さん。しかし、利便の良いこの場所を建設会社や不動産会社が目をつけない訳はありません。土地を売らないと分かると、今度はビル建設の話を持ちかけます。「遊ばせておくのはもったいないと言って、様々な建設会社の方が私の所にやって来ました。」と当時を振り返る西尾さんです。数々の建設会社の勧めもあり、ビル建設を考える様になったのは10年程前のことです。
「おばちゃんはこの場所が好きだし、その辺で倒れても皆が顔見知りだから連れ帰ってくれる。だからいずれはおばちゃんが住む家を建てるつもりでした。でも将来を考えると、少しでも収入がある様に事業化した方が良いと思い、ビル建設の計画になりました。」とおっしゃるのは英夫さんです。
多くの建設会社が訪れていた中、最初に選んだのは地元の建設会社です。しかし、話が進行する途中でこの建設会社は倒産し、計画は白紙に戻ります。次に選んだのは大手建設会社ですが、経営不振により他の建設会社に吸収される事態となり、不安を抱いた英夫さんはこのプランを取り止めます。
そして、次に西尾さんの元にやって来たのは某建設会社(A社)です。早く契約にこぎ着けたい一心のA社は、早急なペースで話しを進めます。しかし、急ぐあまりの誠実さを欠いた対応に納得が行かない英夫さんです。それどころか、ある日突然、設計料の請求書が届きます。もちろん、こんな不条理な話は決裂します。ご自身も電気関係の仕事をされているので、仕事仲間からも建設業界の良からぬ噂が耳に入る英夫さん。建設業界に対する不信感は募ります。「今でこそ耐震偽装だの、欠陥住宅だのと騒がれていますが、阪神大震災の時も倒壊した後を調べると、コンクリートに新聞紙が混ざっていたなどということがありました。また、不当な利益を上げる業界の良からぬ噂も耳にしました。建設業界のこの様なモラルは、好ましくない印象として強く残っていました。」とおっしゃいます。そして、「素人が毎日毎日現場に来て、実際コンクリートを流し込むところを見ても、本当にきちんと建てているかどうかなんてわかりません。重要なのは信頼のある建設会社にお願いすることです。」ともおっしゃいます。
ビル建設計画がスタートしてから約10年、実現に至るまでは紆余曲折があった様子です。
いくつか持ち上がったビル建設計画も中座していたある日、丸二の仕事に関わったことのある知人を通じて丸二を知ります。「こじんまりしている割には、しっかりした会社だと感じました。専務や社員の話を聞いてみると、この会社だったら、偽装や不当な利益だのと言う悪さもしないだろうと思いました。」と英夫さんは笑いながらおっしゃいます。そして、「専務さんの”僕の会社は大きくもならなければ、小さくもならない”と言う信憑性のある言葉が印象に残っています。お話に地道さが感じられ安心できました。」と続けるのは西尾さんです。その後話合いを重ね、丸二の誠実な対応に安心感も募り、建設を決めます。
さて、建設は決まりましたが、店舗の入居者が決まらない内に工事を開始するには不安が残ります。「丸二さんが一生懸命探してくれたのがモスバーガーです。丸二さんの面倒見の良さを感じました。」と英夫さんです。立地条件の良いこの場所を訪れたモスバーガー側は一目で気に入り、一日も早く開店したいと申し出ました。西尾さん側もモスバーガーなら納得、安心して工事はスタートします。平成17年6月のことです。
「丸二さんはこの近所に現場事務所を借りて、監督が常駐していました。何かあればてすぐに対応してくれる状況で安心できました。」と西尾さんはおっしゃいます。以前は近くにお住まいで、空き地になっていたこの土地にしばしば草むしりにやって来た西尾さんですが、工事が始まってからも散歩がてら現場を訪れます。「建設に詳しい近所の方から”丁寧に建てていますね”と言われました。」とおっしゃいます。「僕は地鎮祭や棟上げ式など行事がある時にしか来なかった。丸二さんを信頼してお任せしました。」と英夫さんです。
そして、耐震偽装が騒がれたのは工事も終わりに近づいた頃のことです。この周辺でも数件のマンションが被害を受けた様子です。「丸二さんは”うちは大丈夫です”と答えてくれました。そして、基礎工事から完成するまでの進行状況を写真に残してくれましたので安心しています。」とおっしゃる西尾さんです。「家は基礎がしっかりしていることが一番大切です。トラブルもなく、しっかり建っている様子で良かったと思います。」と英夫さん。入居後実際に地震を体験した西尾さんは、「地震が来ても揺れをあまり感じないですよ。」とおっしゃいます。
問題もなく工事は進行、平成17年12月に西栄ビルは竣工となります。
竣工と同時に開店した1階のモスバーガーは、今日もお客様で賑わっています。2階は現在入居者募集中です。「風俗・飲食・金融はお断りしています。90平米強ある広さなので、美容室や歯医者さんなどが入ってくれると良いですね。入居された方が自由に使える様、トイレと給湯室があるだけで、後は仕切りのないスペースにしています。」と英夫さん。お客様が出入りしやすい様に側道からの専用階段を設け、独立性を高めています。
そして、3階が西尾邸です。1階の南側道に面したエントランスから、専用のエレベーターで3階に上がります。玄関を入ると、フラットの床でつながるバリアフリーの居住空間が広がります。2年程前に自転車で転倒し足を悪くされた西尾さん。リビング、ベッドルーム、サニタリー、トイレの床まで段差を無くしたフラットな床面は、つまずく心配もなく安全な暮らしが実現しています。「お掃除もモップでサット拭くだけで良いので楽ですよ。」と西尾さんはおっしゃいます。
対面式のキッチンを設置した広々としたリビングダイニングは、南側にベランダを設け明るさを採り込んでいます。リビングの西側にあるのがベッドルームと和室です。ベッドルームは出窓を設けモダンなデザインとなり、引戸を開けると和室とつながる工夫がされています。また、玄関横には2畳以上ある大きな収納スペースがあり、北側の非常階段に抜ける設計になっています。そして、お風呂やトイレの入口も大きく取り、車椅子での対応も可能な仕様となっています。
ひとり暮らしの西尾さんの元へは、英夫さんのお嬢さんが二人の小さなお子さんを連れて度々訪れます。「小さな子供達が走り回っても音が響かないので安心です。お風呂も大きいし子供達は喜んでいます。」と西尾さんの感想です。明るくて、広くて、収納スペースがたくさんあり、バリアフリーでさらに暮らしやすさが増した西尾邸です。
「このダイニングテーブルも、丸二さんが一緒に買いに行ってくれたの。とにかく皆さん良く気がついて面倒見が良いの。”何かあったらすぐ連絡して下さい”と言ってくれるのも嬉しいですね。これからもずっとお付合いして行きます。」と西尾さんの言葉です。「明日はおばちゃんの誕生日、大きな花束が届いていたのでビックリした。引渡しが終わってからもこんな気使いをする建設会社は他にはないでしょう。」と英夫さんです。
西栄ビルが完成するまでに約10年と長い年月を費やした西尾さんが、縁あって出会った丸二です。「丸二さんにして良かったと思います。面倒見の良い会社とは長続きすると感じましたね。丸二さんだったら安心して人に紹介できます。」と嬉しい言葉を最後にいただきました。