お彼岸に訪れた墓前には、ススキ、ケイトウ、秋桜の花が供えてありました。空を流れる雲や涼やかな風に秋の気配が漂います。立秋を過ぎた9月最後の土曜日 、杉並区阿佐ヶ谷に建つ賃貸マンション「ティラ」のオーナー玉木さんをお訪ねしました。
今回ご紹介するのは、一人の女性がゼロからスタート、ご自身で土地を購入し、投資用の賃貸マンションを建設されたお話です。
玉木さんは会計事務所にご勤務、ご自身でもファイナンシャルプランナーの資格を有する30代の女性です。10年程前の入所当初から、お客様の確定申告書を見ては、 賃貸マンションの収益が気になっていたとおっしゃいます。当時は金利・地価・建築費の全てが高く、夢のようだった賃貸マンションの取得・・・しかし、ここ数年 で不動産価格・金利共に下がり、チャンスがやってきます。「将来働かなくても、お金が入ってくる態勢を作れたら良いというのが正直な動機です。」と玉木さんは笑 いながらおっしゃいます。
4年程前から本格的に計画を思案し、まずは土地を探すことからスタートです。玉木さんのお住まいは阿佐ヶ谷駅から徒歩数分の住宅街にあります。 「世田谷、練馬などいろいろな場所を見て回りました。でも初めてのことなので、土地の性格が良く分かっている阿佐ヶ谷周辺がベストだと感じました。」 と玉木さん。交通の便の良さを第一条件に、1年かけて探したのが、阿佐ヶ谷駅から徒歩3分の商店街にある土地でした。「融資の申し込みに銀行へも一人で行きました。 30代前半のことでしたが、しっかりと計画を伝えれば、きちんと対応してくれます。若いうちだと団体信用保険が使え、銀行も融資がしやすいようです。」平成14年1月、 土地購入が実現します。
「ティラ」の設計を担当したのは、一級建築士事務所「RU・I(アールユー・アイ)」 代表の五十嵐徹氏、インテリアプランナーとしても活躍される建築家です。
平成14年3月、友人の紹介で五十嵐氏に出会います。建築に関して全く様子が分からない玉木さんには、相談に乗ってくれる建築家の力が必要でした。 実際に五十嵐氏が設計した賃貸物件を何ヶ所か見学、まず洗練された建物のデザインが気に入ります。そして、何度か会う間に色々話し合えることを実感します。 「建築には充分な話し合いが必要です。建物が気に入っても、お互いに性格が合わないと厳しいかも・・・」と玉木さんはおっしゃいます。「五十嵐先生にお願い したのは、周りの建物と差別化できる付加価値の高い設計です。外観の優れたデザインはもとより、入居者が満足できる空間、メンテナンス性の高い頑丈な建物を お願いしました。」と、入居率や維持費も考慮した玉木さんの希望に添って、プランは順調に進行していきます。
「面倒見の良い五十嵐先生が、面倒見の良い丸二さんを紹介してくださいました。これもご縁です。」と、玉木さんは丸二との出会いを振り返ります。
取得した建物に維持費が掛かり過ぎるようでは、賃貸の収益も見込めなくなります。玉木さんが建設会社選定に当たり重要視したのはアフターサービスです。
「何度か丸二さんに建設を依頼された経験のある五十嵐先生から、アフターサービスの良さをお聞きしました。また、価格の相談にも乗ってくださり、安心してお任せしました。」と玉木さん。平成14年11月、工事着工となります。
古くからの商店街での工事、近隣からの苦言もいろいろあった様子です。「住んでいる場所での建替え工事は、お付き合いのある近隣の方が温かく見守ってくれます。
でも、今回の工事は"よそ者"が入るという周囲の目があり、毎日現場に近隣の方がいらしたり、工事時間帯の制約があったりと大変だった様子です。でも丸二の鈴木常務さんや現場監督が掛け合ってくれたお蔭で、私自身の耳に直接苦情が入ることは一度もありませんでした。感謝しています。」
と玉木さんの言葉です。建物が密集した場所での工事でしたが、丸二から毎月届く工程表に安心感も募りました。
工事は予定通り進行し、平成15年6月、「ティラ」は無事竣工を迎えます。「賃貸物件は事前に入居者の募集も行っていますので、予定工期内の完成は重要なポイントです。」 と玉木さんはおっしゃいます。
「安い見積りを出してくる建設会社もあります。でも安いだけでは・・・良い品質とサービスを納得のいく価格で提供してくれることが大切。
そして、長い間積み重ねてきた実績がある建設会社をお勧めします。」と、今回の経験から建設会社選定のアドバイスをいただきました。
コンクリートとガラスブロックが印象的な「ティラ」。青空の下では凛とした佇まいを、そして夕暮れ時のライティングの下では、温もりのある趣を感じさせてくれます。
賃貸マンション部分は2階から4階で5戸、全て1ルーム仕様です。完成見学会には入居希望者の方も訪れました。 最上階の部屋は人気があり、抽選で入居者を選びました。家賃は周辺物件に比べ高めの設定ですが、募集1ヶ月程で満室になりました。 コンクリートの堅固な構造は機密性が高く、駅に隣接した商店街の一画とは思えないほど静かな環境を創り出し、入居者にも好評です。
1階から地下へとつながるスペースは貸店舗です。地下を造ったのは、緩い地盤を考えてより強固な建物にするためでした。 飲食店街の中にあるため貸店舗に・・・「でも、失敗だったかな。もっと広いスペースだと大手企業の需要があります。 逆に個人のオーナーさんには少し広すぎるし、中途半端になってしまいました。店舗に関してはまだまだ勉強が必要です。」と玉木さん。 入居が決まるまで少し時間を要したようですが、今年の9月、個性的な飲食店「ごえん」がオープンしています。
「五十嵐先生や丸二さんが、今でも親切に面倒を見てくださいます。私一人ではとてもできなかった、まわりの方に恵まれました。」と玉木さん。 管理会社への委託はせず、ご自分で管理をしています。清掃は杉並区のシルバーセンターへ依頼しています。「週に一度、お掃除をお願いしているのですが、 律儀なお年寄りの方で、隅から隅まで拭いてくれます。とても安い賃金なので申し訳ないほどです。」とおっしゃいます。丸二の1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月 の定期点検も受け、メンテナンスの良さを実感されています。「こちらが気付かないところまで直してくれます。簡単なことでもすぐに来てくれますし、本当に助かっています。 管理会社への委託も考えましたが、今のところ必要がありません。」と、アフターサービスの良さが維持費の削減にも役立っています。
「もし次があるのなら丸二さんにまたお願いします。今度はルネス工法も考えてみます。」と嬉しい言葉をいただきました。
「ティラ」が完成して1年3ヶ月が経ちました。玉木さんの初めての不動産投資は順調のようです。「一度経験すると情報の入り方が変わってきますし、 いろいろなことが頭の中を巡ります。人に勧めるためにもいろいろとシミレーションを試みています。」と現在の玉木さんです。
資産設計の専門家であるファイナンシャルプランナーとしての立場からのご意見もお聞きしました。「今の低金利では、預金は収益を生みません。 資産を増やすにはお金の運用が必要です。賃貸用不動産への投資は、部屋が空かない限り収入はありますし、物価の上昇にも対応できます。」とおっしゃいます。「賃貸用不動産は、株等の投資と比較すると長期展望が必要です。しかし、無理のない収支計算を行い、充分調査したうえで場所を選定し、運用方法を明確にしていけば、リスクの少ない投資が実現できます。若い時に気付いて、勉強し、実現させることをお勧めします。自分で働いている限り家賃収入は返済に回せますし、余裕ができた時に繰り上げ返済をしておくと、より安全な資産運用が可能です。」と納得のいくアドバイスをいただきました。
仕事を通して知り合ったたくさんの方々から、いろいろな話を伺ってきたのが現在役立っているとおっしゃる玉木さん。ゆっくりと言葉を選んだ解りやすい説明は、 興味深いものでした。聞く者に夢と希望を与えてくれるお話、ありがとうございました。
「ティラ」の1階には居酒屋「ごえん」が入居しています。1階はカウンター、地下にはフローリングの床で寛げるスペースがあります。 コンクリートの打ち放しを生かした造りは、自分の部屋に居るような気分にさせてくれます。店内に流れるビートルズと、 昭和時代のレトロとポップがマッチしたインテリアに、忘れていた時間を取り戻せる気がします。ご馳走になった「牛筋のオリジナルスープ」は、 おいしいだけでなく、身体も心も元気にしてくれる温かい味でした。帰りがけにくださった5円玉が入った小さな袋、ここでも人の縁を大切にする 方々に出会えることができました。