【COMS(コムズ)】は
COMMUNITY(コミュニティ)
COMPLEX(複合)
COMPANION(仲間、友達)
COMFORT(快適、心地よさ)
この四つの言葉を表します。「COMS HOUSE」は、その名の由来通り、神田東松下町に建つコーポラティブ形式の集合住宅です。JR神田駅から徒歩4分、ベランダ部分の装飾と随所に用いられたガラスブロックをアクセントにした10階建のマンションがあります。その外観は瀟洒な印象とともに和風のイメージを配し、下町の風情を残す地域との調和を保ちます。今回お訪ねしたのは、7階にお住まいの阿部さんご夫婦です。
ご主人は都内で広告制作会社を経営。以前は浦和にお住まいでしたが、仕事柄会社やホテルに泊まることが多く、都内に居を移すことを考えます。そんな矢先、都市住宅とまちづくり研究会が企画プロデュースする「コーポラティブハウス神田東松下町(当時の仮称)」のチラシが目に留まります。適正かつ割安な価格で取得でき、100パーセント自由設計ができるコーポラティブマンションは当時から注目されていました。神田に自由設計のマンションが低予算で購入できるこの企画。コーポラティブについての知識はお持ちだったご主人。ご主人はその日のうちに都市住宅とまちづくり研究会を訪れます。「不動産関係の広告制作をしている関係で、マンションに関しての情報や知識はありました。チラシを見てまずこの場所での価格に驚き、まして自由設計なら見逃す手はないと早速話を聞きに行きました。私が一番乗りだったそうです。」
当初の計画は、3F~7F各フロア2世帯、計10世帯の募集でした。コーポラティブであれば1フロア独占も可能かと希望したところ、即答オーケーだったとのこと。早速7階1フロアでの見積りをとります。「この利便の良い立地条件で、約124平米の広さに対しての金額は充分納得でき、即決しました。」平成12年11月のことでした。そしてその年12月には建設組合が設立されます。建設組合での話合いも積極的に意見交換が行われ、平成13年5月着工、平成14年5月の竣工となりました。「竣工までの間に度々開かれた総会や懇親会のおかげで入居者の方全員と顔見知りです。都心にいながら防犯面も安心できます。」と奥様はおっしゃいます。
阿部家を訪れた人をまず迎えてくれるのがエントランス正面に居る2匹のキリン。阿部ワールドの始まりです。シンメトリーを意識したエントランスホール。真っ白な折上天井と、大理石を床と壁にふんだんに使用したインテリアは、リゾート地のホテルを想わせます。そして扉を空けると開放感あふれるリビングが広がります。この家には廊下がありません。ご主人が特にこだわった点です。間取りもご自分で提案されました。エントランスホールからリビングダイニングと寝室と浴室へ、リビングダイニングから和室とキッチンへ、キッチンから浴室へと、その動線は見事に導かれます。廊下がない分スペースが活かされ、マンションの一室とは思えない空間が生まれています。
「アミューズメント性のある家にしたかったんです。」と楽しそうにおっしゃるご主人。広々としたリビングは大型のプラズマディスプレイとイタリア製のソファでホームシアターに。リビングの二面に配された大きな窓ガラスも全てペアガラスにして遮音性を高め、サラウンドシステムで映画や音楽を楽しめます。左官仕上げの美しい折上天井からの間接照明は、まるで自然光のようで寛ぎ感が増します。
ご夫婦が嬉しそうに案内してくださったのが浴室。東に面したガラスブロックの壁は朝の光を存分に取り込みます。ジェット&ブローバスにつかり、テラスに創られた和風の庭を眺めながらの朝風呂は最高だそうです。この庭で飼っているメダカに餌をあげるのも楽しい日課の一つだそうです。浴室側のテラスは和風の庭、リビング側のテラスには洋風の庭を創りました。ご夫婦の遊び心が感じられます。
奥様のこだわりはキッチン。「共働きなので独立型のキッチンを望みました。メーカーを18社まわり、最初に気に入ったドイツ製のキッチンに落着きました。」と奥様。収納も多く機能的、オール電化でとてもきれいに使用されています。
建設組合は、施工会社選定に3社競合の入札形式をとりました。価格面はもとより、エコヴィレッジ日野の実績も安心材料となり、丸二渡辺建設との契約になりました。昨年5月から工事が始まりました。都会の真っ只中での建築。思わぬトラブルの発生で工期の遅れも出ました。しかし、もともと神田にお住まいや縁ある方の入居となった「COMS HOUSE」。この場所での工事条件への理解もあり、住人の皆様の「あわてず、ゆっくり、よい建物を創って欲しい」との言葉で丁寧な仕事をすることができました。
阿部さんご夫婦も散歩がてら何度か現場を訪れました。「一生懸命な仕事ぶりと、常にきれいに整頓された現場には信頼がおけました。」とおっしゃっていただきました。リビングの大きなソファはドアからの搬入が難しいため、工事途中で搬入してもらった時のスタッフの親切な対応にも感心されたご様子。「竣工後も気になる個所の対処はお願いしています。終わってからも丸二さんとのお付き合いが続いています。」と奥様。
阿部邸は、細部に至るまでこだわりのある凝った仕様となっています。玄関・リビング・キッチン・寝室の折上天井。その時間をかけた丁寧な仕事ぶりを目の当たりにした奥様は本当に感激されたご様子。天井の美しい仕上りを見た他の職人さん方も、自然と自分の持場に力が入ります。壁紙から照明、ドアの取り付けに至るまで、担当者の試行錯誤の努力があったようです。ある職人の方には「創る側も良い勉強をさせてもらいました。」と逆にお礼を言われたりしたこともあったそうです。テラスに創られた庭も、素晴らしい出来栄えの室内に刺激され、配管まで屋久杉で覆う凝った仕事になりました。「こちらのわがままによく付合ってくれました。完成した時は、本当に良かったと感じました。今は感謝の気持ちでいっぱいです。」と嬉しいお言葉をいただきました。
「家を創ることになってから毎週二人で居るようになり、前より仲良くなりました」とご主人。「ショールームの見学はもちろん、小物一つ買い物することも楽しみでした。」と奥様。お二人で設計から仕様までとことんこだわりぬいて完成させたこの家。「仕事柄得た知識と情報の良いとこ取りです。」と笑いながらおっしゃったご主人。お二人で実際に様々なショールームを訪れたり、雑誌で見て気に入った床材のメーカーを直接雑誌社に問い合わせたりと、自らの足と目で時間をかけて納得のいくものを探しました。玄関の大理石から床材、キッチン、洗濯機に至るまでお二人で探した物を指定されています。また、この家はインテリアの美しさだけではなくその機能性にも驚かされます。梁をカバーするとともに圧迫感をなくすことに成功した折上天井、大きく重たい扉を吊ることにより軽快な操作性とバリアフリーを実現したキッチン入口、納戸の通気性を高めるために寝室に設けた空調用のガラリ、断熱性・遮音性を考慮したペアガラス等々、細部に至るまで暮しやすさにもこだわりました。
「近くのハイグレードマンションも見に行きました。でも、価格はもちろんのこと、自分達のこだわりのある設計・仕様が全て実現できたことでそれとは全く比較になりません。」と満足感一杯のご夫婦でした。
ご主人が最後にお話くださった言葉が印象的でした。「家創りに参加して、家を創る作業はものすごい楽しいことを実感しました。家を持つのなら自分で設計して、自分の思い通りに創ると、楽しさと面白さが2倍になります。それを放棄するのはもったいないことです。」と。
この日お訪ねしたのは午後4時。取材が終わる頃には外は暗くなっていました。夕方から夜へ、阿部邸の表情はまた違った趣がありました。朝日の中でのインテリアも覗いて見たい気がします。訪れた人を去りがたくさせる、そんな空間のある阿部邸でした。