2019.02.28
星を継ぐもの
テレビ東京の朝のビジネス番組「モーニングサテライト」の中に、経営者の愛読書を紹介する「リーダーの栞」というコーナーがあります。先日は、世界で最も先進的なプラネタリウム投影装置を開発している大平技研という会社の社長さんでした。私自身、プラネタリウムには久しく行ってないので、なかなかイメージが湧かないのですが、とにかく本物の夜空が出現する程の最高の技術とのことで、ギネスにも登録されているそうです。その技術開発者でもある社長の愛読書が、英国の作家ジェイムズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」でした。
SF小説の金字塔と言われている「星を継ぐもの」は、私自身、昨年読んだばかりだったので、とても印象に残っています。所謂冒険活劇的なSF小説ではなく、星や人類のルーツを探求する知的好奇心を刺激するものでした。夜、月や星を見ると、宇宙創成へのロマンと人類や自らの生命のルーツに思いを馳せますが、プラネタリウムの開発も(きっと)星や宇宙への強烈な憧れや探求心が為せる業なのでしょう。科学技術の日進月歩の発達は、人々の日々の生活を便利にしたり、人の心を癒したり、新たな経済を生み出したりと、人類の進化向上に大いに寄与しています。
けれども一方、科学技術は時に(意図せず)人の生命や自然界を傷つけてしまうこともあります。原子力発電や地球環境の汚染(温暖化等)もその中の一部でしょう。それまで(自らも)恩恵に預かりながら、事が起きれば、突如非難に転ずる理不尽さに、科学技術者たちは悩みを深めていると推察します。けれども時は進み、地球規模で様々な障害が発生しつつある今、科学の進歩(あるいは経済の発展)と自然界の正常化との折り合いを付けて行くべき時代に入って来たのは事実だと思います。
美しい夜空、たなびく雲、眩しい朝日、輝く夕陽、気持ちの良い風・・・普通の日々の中で感じられる素晴らしい自然の恩恵のひとつひとつを、私たち人間は決して忘れてはいけない。全ては宇宙創成からの創造物であり、人間が造ったものは何ひとつ無いのだから・・・。夜空の星を見ても、「星を継ぐもの」を読んでも、只そこに在るのは、宇宙や自然界への畏敬の念のみです。その「畏敬の念」こそが、これからの科学技術をより素晴らしい道へと案内してくれると信じています。
※ジェイムズ・P・ホーガン著 「星を継ぐもの」