2019.01.23
新時代への前奏曲
さあ、平成31年が始まりました。世間では昨年後半以降、「平成最後の」という枕詞が駆け巡り、ある種の寂しさと郷愁感が演出されていますが、同時に「新元号元年」へ向けての前奏曲も静かに始まり、遠くからは小鳥のさえずりが聞こえ始め、あと少しで新しい時代の夜明けが告げられようとする時間帯でもあります。確かに今の日本を取り巻く様々な状況は、決して楽観視はできませんが、時代の大きな流れは本質化、露呈化へと加速しているのは確かであり、(相対的に)真っ当な道を行く太陽の国、日本の時代へ向かう予感がします。
今後は、米中貿易戦争や近隣国との重大案件が、日本の経済面と国防面に厳しい影響を与え始めると思いますが、この機会を得て、あらためて国の繁栄と国(国民)を守ることを現実的に考える時期が来たと思います。日本経済を世界的にリードして来た我が国の自動車産業が、「電気自動車・自動運転・若者の車離れ」という、かつて経験したことのない超大な逆風に直面している様に、全ての産業が重大な岐路に立たされると思います。
それと同様に、私たち一人ひとりも、今までの生き方や人生観の岐路に立たされているとも感じます。簡単に「モノからココロへ」と言いますが、これが単なるキャッチコピーではなく、本当に国や人や企業の生き死にに関わるほどの真の現実問題として立ちはだかるものに成ると思います。それが新元号の時代の主題であり、そこを真っ先に乗り越えられるのが日本ではないでしょうか。
さて、昨年の大晦日は、恒例の紅白歌合戦を観ながら、家族と共にゆっくりと年越しをしました。紅白歌合戦で個人的に注目していたのが、椎名林檎と宮本浩次(エレファントカシマシ)の「獣ゆく細道」で、思っていた通り、宮本氏の「狂演(!)」には度肝を抜かれました。衣装も全員が「和(着物)」の装いで、富士山や太陽(日の丸)という日本をイメージしたステージデザインの中、二人が静と動を演じ分けていましたが、そこには日本の美と幽玄の世界観があり、静かな感動を覚えたのです。
これからは日本人が日本のことをもう一度良く知り、あらためて日本の素晴らしい本質(DNA)を見出して行くことが大切だと思います。それは同時に、日本的な本質と相反する異物が露呈されて行く事にも通じます。日産自動車のゴーン氏の件は、法的な問題とは別の次元において、日本の経営者の基本的精神とは大きくかけ離れているような気がします。この違和感、この異物こそが次々と表面化して行く時代になると思います。
日本の古い文学や絵画や映画は、やはり素晴らしいと感じます。海外の様々な芸術の中にも、(浮世絵をはじめ)日本からの影響を受けているものが多くあります。世界の端っこにある、こんな小さな国なのに、なぜ関心を持たれるのだろう。なぜ小津安二郎監督の「東京物語」が世界一位の映画として評価されたのだろう。なぜ今、多くの外国人観光客が日本に来るのだろうか。
日本人である私たちが、本当の日本の良さを探求することで、新元号の時代も「佳き世」に成るのではないかと思います。「平成時代」は戦争の無かった時代として後世に語り継がれるでしょう。新元号の時代は、世界が日本を尊敬する時代にして行きたいと思います。その為にも、私たち一人ひとりが、日本人として恥ずかしくない道を歩んで行かねばなりません。そのような気持ちを胸に、平成31年と新元号元年を楽しく歩いて行きたいと思います。
※最近読んだ本
泉鏡花「高野聖(こうやひじり)」
泉鏡花の作品を初めて読みました。「高野聖」は泉鏡花の短編小説ですが、所謂「幻想小説」です。夏目漱石とほぼ同時代の日本の小説の中で、「幻想小説」があるとは思ってなかったので、少々驚きながら読み終えました。物語は高野山の旅僧が体験した怪奇譚です。文体が古く難しいので、なかなか読むのが大変でしたが、日本語古来の美しさと独特な幽玄世界を味わうことができました。同時期には、「五重塔」で有名な幸田露伴が書いた幻想小説もあるとのことで、次に挑戦してみたいと思います。