社長ブログ

不思議な夏、忘れない夏

今年も日本の8月が終わろうとしています。日本の8月とは、原爆、終戦、御巣鷹、お盆であり、まさしく慰霊の月です。秋田の金足農業高校の大躍進で盛り上がった高校野球大会でも、8月15日の終戦記念日の正午には、サイレンの音と共に黙祷を捧げました。あのサイレンの音は怖いです。空襲警報のように感じます。長岡花火大会でも、長岡空襲戦没者への慰霊の花火「正三尺玉」が打ち上げる際には、サイレンの音が鳴り響きます。それは多分、きっと、「忘れないで」「思い出して」という彼方からのメッセージではないかと思います。
8月15日の正午、日本武道館では全国戦没者追悼式が行われ、天皇陛下から(平成天皇にとって最後の)お言葉が語られました。その神々しいお姿には、「私たちの国は、世界で唯一原爆投下された被爆国である。そのことを決して忘れては行けない」という強い思いを感じました。あの戦争が終わった直後、昭和天皇の存在が(不思議なことに)米軍マッカーサー元帥の魂を大きく揺さぶりました。その結果、奇跡的に日本の国体は守られ、戦後の復興と発展が始まりました。その後の平成時代も戦争は無く、平成天皇による戦没者への慰霊の旅が続きました。
来年から新元号が始まり、新たな日本の歴史が始まります。新天皇は私たちと同世代です。戦後生まれの世代が21世紀の平和で幸福な日本を担って行かなければならない。同時に巨大カオス化している世界を相手に、国を守って行かなければならない。大自然の怒りの猛威によって、地球規模の天災地変が多発する恐れもあります。そのような意味で、世界や地球の行く末には大いなる不安の雲が横たわっているのも事実です。けれども私は、新しい日本の存在が此処に美しい晴れ間を出現させて行くと確信しています。その為には忘れないこと。絶対に忘れないことだと思います。
さて今年の夏休みは、家族旅行で長野の車山高原に行って来ました。ビーナスラインからの夕暮れの風景も美しく、とても素敵な2日間でした。けれども、こうして家族みんなで旅行ができる喜びを感じつつも、それがいつまでも続くとは限らないと気づいた時、「今、此処に在る幸福」への深い感謝と郷愁の念が生まれて来ました。今、自分が生きている(生かされている)ことが奇跡であり、それだけで既に最高の幸福であると・・・。この人生で、こんなに素晴らしい家族、両親、ご先祖様、縁ある人々と出会えたことに、一人静かに、心震えた夏でした。
一方、最近の日々のニュースでは、親子間や夫婦間等の嫌な事件報道が多く、今の時代の精神的不安定感を認めざるを得ないのも事実です。またもう一方では、小さな子どもが行方不明となり、必死に成って探す母親、家族、地域の方々、ボランティアの方々の姿に、人間の心の美しさを見出すことも出来ました。あの幼い2歳の男の子が無事に発見されたことも、そのひとつの奇跡ではないだろうか。私たちの目には見えない場所で、私たちには分からない何か特別な事が起きていたのか。あの男の子を守ろうとする目には見えない特別な力が働いていたのか。そんな不思議なことの起きた平成最後の日本の夏が今、終わろうとしています。
結局のところ、エレファントカシマシや宇多田ヒカルが歌っている様に、「メシ食って出かけるぜ!」「飯食って笑って寝よう!」で良いのだと思います。人間生きていれば、日々いろいろなことがあるけれど、今の自分自身に出来ることを懸命にやって、今日はご飯を食べて寝ればイイ。明日もご飯を食べて出かければイイ。そんな前向きな日々を重ねて行けば、きっと全ての問題は解決して行くに違いない。答えはお天道様が出してくれるから。そんな大きな気持ちで、この毎日を(デクノボーのように)オロオロと、不器用に、素朴に、でも一生懸命歩んで行きたいと思います。感謝と思いやりの心さえ忘れなければ、お天道様はいつでも頭上に照っている。いつでも不思議なことが起きる。
※最近、読んだ本
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外国文学は今まであまり関心が無かったのですが、有名な本を数冊買って気楽に読んでみたら、意外にも面白かった。「車輪の下」で有名なヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」は、インドの物語で、主人公シッダールタの悟りへの道を描いています。釈尊(仏陀)からインスパイアされたものと思われますが、西洋人が仏教を描いていることも興味深かったです。
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「星の王子様」で有名なサン=テグジュペリの「夜間飛行」は、作者自身の経験をベースにした物語ですが、「星の王子様」の作者がまさか戦時中の郵便飛行業のパイロットだったことを知り驚きました。そして実際にサン=テグジュペリはナチス戦闘機に撃墜され、一生を終えたのです。その人が描く生命を懸けての飛行体験の物語には不思議な美を感じさせます。
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もう一冊は、トーマス・マンの「トニオ・クレエゲル」という本です。トーマス・マンは「ベニスに死す」が有名で、これは大好きなルキノ・ヴィスコンティ監督の映画が最高に素晴らしかったもの。「トニオ・クレエゲル」も地味ながら、人間の孤独、美への憧憬が描かれており、私が好きなワーグナーやマーラーという音楽家がいた時代の中で、西洋文化の翳りゆく匂いを感じました。
読書は好きです。映画や音楽も好きです。人間の良い思いが芸術や文学の形で遺り続けることで、未来の人間はもっともっと賢くなって行くでしょう。そして私たちは良い建築、良い会社、良い生き方を遺し続けて行くのみです。丸二は地域の安全基地、拠り所に成って行きたいと思います。