2017.01.19
歴史の積み重ね
2017年(平成29年)、良く晴れた素晴らしいお正月も終わり、早くも半月が過ぎました。最近のニュースでは、天皇陛下の譲位に伴い、平成31年1月1日から新元号に成るとの報道が気に成りますが、前回の昭和64年の際の(当時の)小渕官房長官が「平成」という文字を発表した瞬間が脳裏に蘇ります。今上天皇にはもっともっと長く・・・という思いがあるのですが、(同時に)毎日の(日本と国民の幸せを心から願う)神事の激務を考えると、唯々「ありがたい・・・」という思いだけです。
昭和から平成へ・・・そして次の時代へ。日本の平成時代は戦争の無い時代でした。そして次の時代においても、戦争の無い、物質的な豊かさと精神的な豊かさが共存できるような時代に成ることを期待しています。日本が中心になって、世界の平和を実現して欲しいと思います。そういう意味では、昭和時代と平成時代の集大成に成るのではないでしょうか。その為には、私たち日本人一人ひとりが、人間的な成長を遂げていくことしか無いと思います。私は、皇太子様とほぼ同世代です。天皇陛下と同世代を生きるとは、ある意味、時代に対する責任を共有する意識を感じます。次の元号の時代を素晴らしい時代にして行きたいと思います。
一方、外国ではテロが多発しています。いよいよ明日米国大統領に就任するトランプ氏の発言や言動にも、いろいろな意味で緊張感が走ります。年末年始、NHKの「ヨーロッパ鉄道の旅」という番組を観ましたが、あんなに美しくて、長閑で、歴史ある場所で、人々が幸せそうに暮らしている様に見えるのに、実際には経済は低迷し、治安は悪化し、不安の日々を送っているという現実との乖離がなかなか理解できません。確かにヨーロッパは戦争の歴史です。EUが上手く行かないのも、そのような土地の持つ因果があるのかも知れません。あんなに天国のような美しい景観の中で暮らしているのに、苦しみと不安が増している・・・。一方、日本の都会はコンクリートジャングルなのに、それでも(相対的には)平和に安全に生活が出来ている。このギャップは一体何だろうか。やはり目に見えない世界では、逆の様相(因果)があるのかも知れません。
昨年の大晦日は、家族と紅白歌合戦(部分部分)を見ました。視聴率が一番のテーマの様で、いろいろな趣向や演出を凝らしていましたが、個人的にはかつてのNHKらしく、生真面目に「歌合戦」のみに集中して欲しいなという印象を持ちました。民放とは違う価値がそこにはあるからです。いろいろな企画や演出に時間や労力を掛けるよりも、一人でも多くの歌手の歌を聴かせて欲しいからです。無名でも良いので、NHKが評価する素晴らしい歌手、素晴らしい歌をもっと紹介して欲しい。一年の最後に(静粛な気持ちで)日本の歌を思い出す・・・何かそのような文化こそが、かつての日本の発展を陰から支えていたのではないでしょうか。日本の価値とは、目には見えない面の方が強いと思います。ヨーロッパの様に、目に見える美しい風景や街並みとは全く別物の「風」の様なものです。その風を吹かせ続けて行くことが大事だと思いました。
紅白に関しては、人気グループのSMAP問題もありました。でも25年もの間、第一線の有名グループとして活動し続けて来たことに対する尊敬心の方が勝ります。これは本当に大変なことだったと思います。内部の人間関係もある様ですが、時間が過ぎればまた変わるのでしょう。全ては「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」です。私が好きな日本のロックバンド「エレファントカシマシ」は、今年でデビュー30周年です。最初から同じメンバー(同級生)のままで30年とは、これも大変なことだと思います。今年も武道館で新春ライブがあり、妻と行ってきましたが、50歳なのに物凄いパワーでした。此処に「続けて行くこと」「積み重ね」の凄みがありました。これが歴史というものなのでしょう。日本の皇室が2677年(途切れずに)続いていることと、(他国よりも)平和と安心が持続していることは、決して無関係では無いと思います。今年も一年、日本も、個人も、歴史の積み重ねを続けて行くこと。そのような風を吹かせて行きたいと思います。今年も何卒よろしくお願いいたします。
※溝口健二監督の映画「残菊物語(1939)」「祇園囃子(1953)」
最近DVD等で溝口健二の有名な二作「残菊物語」と「祇園囃子」を鑑賞しました。今までに見た溝口作品は「雨月物語」「近松物語」「山椒大夫」「祇園の姉妹」「赤線地帯」で、どれも全て本当に素晴らしかったのですが、今回の二作はさらに良くとても驚きました。今から60~70年以上も昔の映画なのに、その感動を言葉で表現できません。やはり私が好きな日本の映画監督は溝口健二です。この人の作品の中に流れている芸術性と精神性に心が震えます。そして、どの作品にも幽玄さが潜んでいます。黒沢明や小津安二郎に比べて決してメジャーではありませんが、多くの日本人に観て欲しい。あらゆるものに迎合しない、極致の世界を感じます。