2016.08.29
歩いて行く
イタリア中部で大地震が発生し、死者が250人以上に達しているとのことです。被災された方々へのご冥福を心よりお祈りいたします。特に被害の大きかったアマトリーチェという町は、イタリア有数の観光地とのことで、ニュースで見た(地震以前の)街並みの美しさには心動かされました。このようなヨーロッパの古き街並みは、それ自体が人類の遺産です。けれどもこうして一夜にして崩壊してしまうと、日本的な言葉で言う・・・「もののあはれ」を感じさせます。以前ヨーロッパに行った際、イタリアはローマ、フィレンツェ、ミラノ、ベニスを巡りましたが、どの町も歴史の重さを感じさせるノスタルジアに満ちていました。「日本もこうあって欲しかった・・・」と感じたのを覚えています。
日本は地震国です。建物の耐震性を非常に大事にします。そのおかげで、大きな地震が発生する度に、耐震基準が上がり、時代と共に建物の建て替えが促進されて来ました。それは同時に、古き良き街並み、美しい景観、歴史的遺産を失う歴史でもありました。だからこそ、ヨーロッパの街並みに対する強い憧れの思いがあったのでしょう。けれどもこうしてみると、人類の造った文明は(いずれ必ず)消えて無くなるものだと分かります。諸行無常とはまさにこのことなのでしょう・・・。結局、日本は(失うものも多かったと思いますが)世界一安全な国土に成ろうとしています。地球が大掛かりな地殻変動期に突入した今、日本人の先人たちの先見性に(あらためて)感謝いたします。
日本の建物は、世界で一番(断トツで)安全です。このことは今後大いに評価されて来ると思います。古き良き家並みが(時代と共に)失われたことへの寂寥感もありますが、今と未来を生きる日本人の生命と生活を守ることも何よりも大事です。目に見えるものはいつか朽ち果てて行きます。これからは目には見えない、決して朽ちない文明の時代に変わるのでしょう。それはきっと人間の精神文明ではないでしょうか。「日本人の心」が人類最大の(生きた)遺産に成って行くのではないかと期待します。もし将来、世界全体が大和の心を持ち得るとしたならば、きっと戦争も終わるのでしょう。
宮沢賢治が「農民芸術概論綱要」で述べた言葉の中に、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである」とあります。個人の幸福は、世界全体の幸福によって成されるのである。けれども世界全体の幸福とは、個人が自らの中に銀河系を置き、(そこに生まれる)個人の「(今)此処に生かされている」ことへの深い感謝の念(の集合体)によって成されるのである。禅問答の様ですが(要は)日本人一人ひとりの感謝の思いの蓄積こそが、世界の全体幸福への道を切り開く突破口と成るのではと期待します。今の厳しい現実(最悪の想定)に懸命に対処しながらも、明るい未来へ向けて、日本人(大和)の心を世界へ広げて行くこと。2020年東京オリンピックがその起点に成れば何より幸いです。
そして丸二は、日々(世界一)安全な建物造りに全力投球しています。その誇りと使命感を強く心に意識しています。まるで銀河系を自らの中に意識して、これに応じて行くかのように。そう思えば、日々建設現場で行われている工事作業の1つ1つが、まるで神事のように感じられて来るから不思議です。今日の1つ1つの仕事や作業が、住む人や街を護り行く所作の1つ1つに成るのではないかと・・・。あらゆる正しい仕事とは、このようにして(本来)とても畏れ多いものなのかも知れません。それが故に、仕事を「している」のではなく、「させていただいている」という実感が(自然に)生まれて来るのです。
私たちは、現場に対する「礼」の意識を大切にしています。スポーツの世界では、優秀なアスリートほど礼儀正しく、自らの競技フィールドへの入退場の際、一人静かに「礼」をしています。この姿に私たちは心動かされるのです。丸二もこの素晴らしい姿勢を見習って、「人や地域のお役に立ちます」と念じつつ、日々現場に対する「礼」の意識を持ち続けて行きたいと思います。そして、全体の幸福と個人の幸福の実現を目指しながら、日々1mmづつ、歩いて行きます。