2012.08.22
復興、古里、祈りのひのき
今日は地鎮祭でした。会社から歩いて15分、西荻窪の駅近く。燦々とした太陽の光の下で、神事を行わせていただきました。今まで住んでいた住まいが解体され、これから新たな建物が造られる。その一瞬の束の間の間、数十年振りに、その土地は太陽の光をたっぷりと浴びます。とても神聖なる時間。そして地鎮祭が行われ、土地が浄化され、また新しい社が建ち、住む人々を末長く護ってゆく。日本の建築文化の象徴である地鎮祭には、何か特別な意味があるように思います。神仏を信じる人も、信じない人も、みんな地鎮祭を行い、ホッとされます。日本人の心の中に、「お天道様が見ているから」という良心は生き続けているようです。建設業に身を置くことで、日々このような神事に触れられていることは、まさに幸せだと思います。
神仏と言えば、いよいよ来年(2013年)は、伊勢神宮の御遷宮です。遷宮とは、20年毎に社殿を建て替える伊勢神宮(正式には「神宮」)の特異なシステムです。遷宮のための木材(ひのき)は、裏木曽加子母の神宮備林から伐り出されます。日本全国の山や森の中から、加子母地域が選ばれたわけです。加子母ひのきは、日本人の心の原点(古里)とも言える「神宮」の社と成り、20年毎に解体された社殿の木材は、他の神社で再利用させます。つまり、加子母ひのきは、「神宮」経由で、日本各地へ広まっていると言う事に成ります。
丸二が加子母森林組合様と共に志していることは、神宮社殿のための加子母ひのきを、一般の住宅にも使わせていただき、特に都会の暮らしの中に、「日本人の心の古里」を復興させようと言うことです。同時に、間伐によって、山に光を入れ、日本の森の生態系を復興させることです。今、日本は全ての面において「復興」が必要な時です。このお盆は、戦争のことを考えました。「戦後史の正体」という本を読み始めました。スカパーでは2本の映画を見ました。「一枚のハガキ」と「日輪の遺産」、共に戦時の物語です。これらの映画を見て、真実はもっと悲惨だっただろうと思いつつ、今の時代の幸福さが身に沁みて分かります。それなのに今の日本は、今の私たちは・・・。
毎週金曜日に行われている官邸前の集会では、参加者によって(自然発生的に)「ふるさと」が歌われているそうです。古里・・・。古里には森や川や田園があり、神社とお祭りがあった。草花が美しく咲き、昆虫が住む。現代の都会の中に(物理的に)「古里」を造ることは難しいですが、心の古里を造ることは可能です。加子母の神宮ひのきは、日本の古里の匂いを運んで来てくれます。強くて不思議なピンク色をした加子母ひのきは、やはり何か特別な「柱」なのではないか。そのようにして、私たちは、ほんの少しずつですが、加子母の匂いを都会に運んでいます。
さて、ある方から教えていただいたのですが、米国International Journal of Health Servicesの2011年12月号に掲載された記事に、「米国において推定14,000人が、日本で発生した福島原発事故から14週間以内に放射性降下物によって死亡。死亡者数はさらに増加し、米国ではすでに2万2千人以上が福島による放射能被爆によって死亡している」と発表されたそうです。本当なら大変なことです。
今、何かを変えなければ成らない時。では、どう変えるべきなのか。そこに明確な指針を出せる人間などいないでしょう。人間業で成せる程度の問題を遥かに超えて来てしまったのだから。だからこそ、「お天道様が見ているから」という精神文化の在る日本なのだと思います。お天道様とは良心、自分の胸の中で燦々と輝いている良心。その良心の声を聞いて、一人ひとりがお天道様に恥ずかしくない生き方をする。その連鎖が、きっと大変革のうねりを造り出すと思います。これが「祈り」の力だと思います。いよいよ、日の本、日本の真価が問われる時が来たと思います。私たちも、「志」を持って、1mmの前進を続けます。「祈りのひのき」の匂いを運び続けます。