2011.08.08
小さな雛型造り
8月に入り、また厳しい暑さが戻って来ました。この刺すような日差しは、(間違いなく)年々強くなってきていると感じます。また、今年の夏は蝉(セミ)少ないらしく、いよいよ地球的規模の環境破壊の波が、私たちの日常にまで入り込んできたようです。福島の原発事故以前から、このような環境破壊は始まっていた訳ですから、何もかもを放射線だけの責任にするのは違うのでしょう。私たちは環境や生命を犠牲にしながら、経済性と利便性を優先させて、今の社会・世の中を成り立たせていたのですから。今の事態は、私たち人類全体が、共に考えて、解決に向けて行動する大きな機会であると思います。
大切なことは、そのことを後ろ向きに捉えるのではなく、前向きに、明るく、ワクワクすることと捉え、皆が一致団結して、協力していくことではないでしょうか。今回の東日本大震災は、そのことを教えてくれたと思います。だから、いつか世界中の人々は、日本と東北の人々への感謝と尊敬の念を表明すると思います。その時を信じて、私たち日本人は、一人ひとりが、新しい社会造りに向けて貢献して行くべきなのでしょう。この時代に、日本人として生まれたことに、心から感謝して。
一般的に大災害の後は、「復興景気」というものが付いてくるのが通常ですが、果たして今回どうなるのか・・・わかりません。今までと同じような発想で、経済復興を行おうとしても、また同じような結果が起きるように思います(もっと大きな被害となって)。そんなに甘いものでは無いように感じるのです。だから、もう「復興景気」は無いと思い、それぞれの業界や会社、個人は、今までとは全く違う、新しい仕事の仕方や生き方を始めていくべきなのでしょう。
現在、日本の政治が大混迷の最中にありますが、これも何かの働きで、また同じようなやり方で乗り切ろうとする力を抑えているのかもしれないとさえ感じます。もっと別のやり方で、もっと新しいやり方で、もっと人間も動植物も自然界も同時に幸福になれる方法を探して、それが見つかるまで、私たちは「待った」を掛けられているのかもしれません。
そうなると、今出来ることはただひとつ。自分たち(個人)ができること(小さなこと)を試し、その新しい道への「雛型」を(日常の中に)見つけることです。新しい社会の仕組みをつくるのには相当な時間が掛かりますが、自分の生活や日常を変えるのは、本日只今すぐにできます。一人ひとりが新しい社会や世の中に相応しい生き方、考え方、仕事の仕方に挑戦していくことだと思います。しかもワクワクしながら。仮に、そのことが多少の軋轢や問題を生じたとしても、次の世の中に必要と成る取り組みを止めてはいけません。必ずある時点で、物事はひっくり返り、良い結果が出て来ると信じます。その方がずっと楽しいことです。今のやり方は、いずれにせよ早晩終わるのですから。
このような一人ひとりの小さな取り組み(雛型)が、少しずつ重なり合って、だんだんと家族や街、そして地域や国家、地球へと拡大していくと思います。最近の選挙の投票率を見ても、もう国民の心は政治から離れているのが歴然と分かります。親離れならぬ、「国(政治)離れ」でしょうか。もう国民は大人になりました。あとは、責任ある個人一人ひとりの小さな雛型造りです。例えば、「道にゴミを捨てない」「人の悪口を言わない」「朝早く起きる」「鳥の声を聞く」「雲を見る」「ありがとうと言う(思う)」「けんかはしない」「テレビを見るのは必要最小限度にする」「よいことは無料で教える」・・・何でも良いと思います。そのようなことを出来るのが、日本人だと思います。
建築・住宅の分野においては、「生命を守る」という面と「ホッとする」という面が大切だと考えています。これから大自然界の調律は、まだまだ続いて行くと考えられますので、地震、火災、液状化、津波、放射線、土砂崩れ、台風、豪雨、豪雪の外側からの災害エネルギーに耐えうる強い住環境が必要です。また、住まいの中での健康性も重要です。自然素材、結露対策、あるいは鬼門の扱い等、様々な視点で、住む人の心と体を守ることです。同時に、このような時代の中で、人々の意識は「絆」「愛」「温かみ」へと向かいます。それはとても自然な事です。外の世界が厳しいが故に、住まいの中が「ホッとする」空間である必要があります。家族が集まるリビング、趣味の部屋、快適な空気環境や色彩環境。このような柔らかさも大切です。
人々の生命を守ること。人々の心を守ること。日本の森を守ること。全て、建築業でできることです。私たちは、次の時代が待望する「新しい建築」の雛型造りに全力をあげています。まだまだ小さな力ですが、この時代に生かされている建設会社として、ワクワクして取り組んでいます。