社長ブログ

加子母の森からのメッセージ

丸二・加子母森林組合の農商工連携事業を通じて、当社の企業理念に関わる様々な思いが、日々生み出されています。「木」は日本の建築の原点ですので、「木」を思い、「木」を使わせていただくことによって、今後の建築の方向性も見えてくるように感じています。そのような背景の中、今現在、加子母の森から伝わって来ているものを、思うがままに文章にしてみました(ひと月ほど前に書いたものです)。タイトルは「加子母の森からのメッセージ」です。
私たちは、木造住宅、鉄筋コンクリート住宅、マンション、コーポラティブハウス、リフォーム等のすべての建築において、(適材適所に)加子母の木を使わせていただき、(広い意味の)武蔵野の地にて、住む人を守ることのできる住環境を創造していきたいと思います。
少々、長い文章ですが、ぜひお読みいただき、伊勢神宮の御用材である「加子母ヒノキ」の力を感じていただければ幸いです。そして、もしお時間が許せば、ぜひ「加子母森林ツアー」にもご参加ください。このツアーは、決して当社の営業活動のためではなく、できるだけ多くの(東京、関東の)方々に、加子母の木の素晴らしさ、日本の山や林業の現状、そして森を守ることへの参加意識を理解していただくものです。どうぞ、よろしくお願いいたします。
加子母の森からのメッセージ
東日本大震災へ
2011年3月11日に発生した東日本大震災の映像が、今だに脳裏から離れません。巨大な津波によって町が消えていく様を見ながら、なす術も無く、ただ大自然の脅威の前に立ち尽くすのみ。多くの人々が生命を落とし、被災され、家族を失い、職を無くし、3か月経った今でも、暗闇の中、放射線の恐怖と対峙しています。それでも東北は、善良な精神で助け合い、地域の力で、ゆるやかに復興へ向けて動き始めています。温かい希望の光が、ほんのりと灯り始めています。5月の末に被災地を目にした時、何故かそのように感じました。
印象的だったのは、東北の美しい自然の山々や空が、あたかも何事も無かったかのように、静かに見護っているような気がしたことです。近い未来、東北は再び光り輝くでしょう。今までよりも、もっと明るく元気に美しく。そして私たちは、被災された方々へ、深い感謝の念を捧げます。日本の「道」を示したいただいたことに・・・。世界の「道」を示していただいたことに・・・。そのようにして私たちは、東日本大震災を、いつまでも想い続けていきたいと思います。
道への気づき
「エコ」や「地球に優しい」等の耳触りの良い言葉の裏側にある本音は、「エゴ」「利益」「我(だけ)良し」でした。日本人のみならず世界中の人々が、自分たちだけの幸福を、追い続けた結果として、今まさに大自然界による調律が始まり、地球規模の天変地異が起こり始めました。それは物質面、精神面の両方をひっくり返すほどのものとなり、今後の私たちの生活、仕事、人生、生命を大いに脅かすことになると思います。先ずは、そのような厳しい現実を直視し、今後起こるであろうあらゆることを想定し、かつ防災意識を持ち、その上で、できるだけ大難が起こらないように生きて行くことだと思います。
具体的には、あらゆる物事への「感謝」の想いを持つこと、つまり、この大自然界の存在に感謝し、生かしていただいていることに「ありがとうございます」と言うことができる感性を持つことだと思います。その意識のもとで、森を護る、自然を護る、地球を護ることへの具体的な行動を示して行く。多くの人々がそのような意識に目覚め、当面の厳しさを覚悟の上で、前向きに、元気に、ワクワクして、この超難局を乗り越えて行くことだと思います。
まさにこの時、私たちが「加子母の森」とのご縁をいただき、日本の森を護ること(林業再生)に参画することができたのは、まさに奇跡的なことであり、それは単なる今後のビジネス展開だけのことではなく、「3.11以後の世界」を生き抜くための、強力な「御守り」と成りつつあります。それは、私たちだけでなく、世界全体にとっての「御守り」にも成ると感じます。
今回の震災が日本で発生した結果、日本(=東北)の人々の人間性を世界が賞賛しました。それは、今後も地球上で起こるであろう有事の際、きっと良き模範と雛型と成り、人々の団結を助けます。また、福島第一原発の事故の影響が、ドイツ、イタリア等の先進各国の「脱原発」を実現させました。そして、神聖なる日本の水資源を、諸外国からの買収から守護しました。同時に、未だ日本列島に残存する各地の原発が、外国からの攻撃を抑止する力を持ちました。かくて、日本は護られ、日本が光り輝くことで、これからの世界も護られると思います。
世界で最も善良なる東北の人々の生命をかけた犠牲は、今後の大自然界の調律を、最小限に食い止め、きっと世界の人々を救うのでしょう。だからこそ、今生かしていただいている私たちは、そのことに感謝し、(残念ながら)犠牲になられた方々に対する「約束」を果たさなくてはなりません。私たちは運が良いのです。「加子母の森」とのご縁があるのです。私たちは、このような想いと実践を東京から発信していかなければなりません。そして建設業の使命である<命綱の建築>を造り、経営使命<丸二は、建築業を通じて、人々の生命を護ることをミッションとする>を果たして行きます。丸二の道は「加子母の森」との出会いによって、より深く確かなものに成りつつあります。
日本の木、加子母のヒノキ
日本人にとって、木は特別なものです。木は、豊かな森林資源であると同時に、そこには特別な精神性が含まれていると感じます。例えば、日本では神様の数を「一柱」「二柱」と数えます。それは、古来から「木には神霊が宿る」と信じられて来たからです。つまり、日本の木の家は、それ自体が「神聖な場」であると言えます。大黒柱(心柱)は、人々の生活を護ります。そう考えると、外材・軽量鉄骨等の住宅・ハウスは、実はまったく別物な家と成ります(効率的・経済的ですが・・・)。
これからの時代、潜在的に求められて来るのは「神聖な場」「護られている場」としての家と成るでしょう。流行り言葉で言うと、「パワースポット」としての家造りです。つまり家自体が、住む人を癒し、救い、包み込み、力を与える。このような捉え方が可能なのは、おそらく日本だけだと思います。そのような意味で日本の木の家は、日本にしかない「天からの贈り物」だと思います。
この神聖なる日本の木々を、心から大切に育て、護る人々がいます。そのような人々が、心を込めて生産した木々こそ、本物ではないでしょうか。ですから、その木々を「使わせていただく」という感謝の意識が大切です。山には精霊がいて、私たちは見られていると感じます。加子母はとても幻想的な雰囲気がありますので、きっと何か特別な山ではないかと思います。
その一つの証明として、加子母ヒノキを、伊勢神宮の御用材として、国が指定しているということがあります。もちろん、強度・色・香り等の素晴らしさや、自然乾燥・森林認証等の管理技術の水準の高さもありますが、伊勢神宮の御用材として、日本中のたくさんのヒノキの産地の中から、唯一選ばれたのには、それなりの理由があると思います、伊勢神宮は20年毎に遷宮を行い、社殿を建て替えることで有名です(式年遷宮)。次回は、いよいよ2013年です。混沌とした世相も反映して、今回の式年遷宮は、日本はもちろん世界からも注目される大きな祭事になるでしょう。日本の大黒柱である伊勢神宮が新たな時代を切り開くことは、地球の未来へも大きな影響を与えるでしょう。その新社殿に使われる木こそ、加子母の森の、神宮美林から伐り出されたヒノキなのです。
ここから始まると思います。一本の木を大切にする精神性があって、初めて日本全体の森が守られると思います。伐採は、生命をいただく特別な行為なので、適切な量とバランスが必要です。間伐によって、森に光が入り、動植物が育ち、森が再生します。さらに植林を行い、四世代複層林の実現を目指します(加子母森林組合の<美林萬世之不滅>)。このように、木や森を大切にする姿勢を商工業者、使用者が共有することが重要です。それがあって、農商工連携事業は成り立つのです。私たちには、森の経済を成り立たせるために、一本500円でしか売れない直径14㎝未満の間伐材を、一本1,000円で(高く)買わせていただきます。本プロジェクトは、そのような精神性と経済性を両立させることを、最優先の目的としています。
伊勢神宮と心柱
丸二は、国の農商工連携事業の認定を受けて、岐阜県加子母のヒノキ材の活用を行い、林業の再生と森を護ることへの取り組みを続けています。加子母のヒノキは、伊勢神宮の社殿に使われる御神木として有名で、宮内庁は、伊勢神宮のための御用材を伐り出す山として、その一帯を「御杣山(みそまやま)」と呼んでいます。
(有名な)20年ごとに社殿を移動する「式年遷宮」(次は2013年)のために、御杣山である加子母の山では、「御杣始祭(裏木曽伐採式)」が行われ、素晴らしいヒノキの大木を伐られます。その御神木は、まず伊勢まで運ばれて、「おか曳き(陸路)」で、外宮へ届けられます。同じく御杣山の反対側(長野県上松町)から伐り出された御神木は、五十鈴川を「川曳き」で運ばれ、内宮へ届きます。加子母の木は、外宮の御神体を納める御樋代と使われると共に、内宮と外宮の社殿建築にも使用されます。
また、伊勢神宮の内宮は、「天照太御神(太陽神)」が祀られていて、外宮は「豊受太御神(「衣食住の神)」が祀られていますが、一説では「豊受太御神」=「国常立太御神(始源神・根源神・元神)」とのことで、外宮の位置付けは実は相当高いようです。外宮の御神体を納める御樋代と使われている加子母のヒノキは、そういう意味で、とても重要な役割を担っていると思います。
その内宮・外宮の2つの社殿の床下には、「心御柱(心柱)」が縦に埋まっているそうです。これは誰も見ることが出来ないらしく、実際のものは分からないのですが、いずれにしても、式年遷宮ごとに新しく、加子母ヒノキが使われているはずです。この「心柱」は、五重塔などが有名で、どういう訳か宙ぶらりんで浮いているものが多く、一体どのような意味で、あるいはどのようにして建てられたかは謎になっています。日本の古代建築には「心柱」があり、宙ぶらりんのものや地中に埋まっているもの等、いろいろあります。一般的には、家の中心点にある「大黒柱」であり、全体を支えている柱です。
伊勢神宮の「心御柱(心柱)」は、長さが約五尺ほどで、一部は埋まっているそうです。柱と言いながら、実際の社殿には接触してなく、構造上の柱ではありません。この「心御柱(心柱)」の意味については、いろいろな説があり、非常に奥が深いので、もう少し勉強してみたいと思います。とにかく、加子母のヒノキが思った以上に大変なものであることが解って来ました。
そういえば、最近の住宅では「大黒柱」という存在が消えてしまったような気がします。いろいろな新しい工法が入ってきて、構造設計も時代と共に変わり、柱で持たせる工法から、壁・パネルで持たせる工法が普及してきたからでしょうか・・・。柱という存在自体がだんだん希薄になって来たようです。でも、日本の古来からの軸組工法では、「柱」「梁」が主役です。家の中心にある太い柱が「大黒柱(心柱)」です。
この「大黒柱(心柱)」は、確かに構造的(物理的に)にも重要な柱ではありますが、五重塔や伊勢神宮の社殿の心柱の設置状況を見ると、必ずしもそれだけの役割でなく、何か精神的な意味合いがあったような気がします。外来の建築工法が多くなり、家から柱が無くなり、「大黒柱」が消えている。それは、単に工法の移り変わりと言うことだけでなく、日本の家から(精神的な意味での)「大黒柱」も失われているという見方もできると思います。
例えば、昨今の、家族の中での父親(=大黒柱)の地位の低下は、もしかしたら「大黒柱」の減少とリンクしているのかもしれません。それは結局、家庭の崩壊を生み、教育、経済、政治の現状へも及んでいる可能性があります。もっと言えば、私たち一人ひとりの心の中にあるべき確かなる芯(心柱)の弱体化にも影響していると思います。多くの政治家に「心柱」、つまり、ポリシーとかビジョン、理念が欠如していることも繋がっているとさえ感じます。
私たち一人ひとりの心に中に、確かなる「心柱」を立てたいと思います。私も、子どもの頃は「柱」のある家で育ちました。だから、私たちも、伊勢神宮の御用材の「心柱」のある家を建てていきたいと思います。伊勢神宮の社殿の床下に埋まっている神聖なる加子母ヒノキの心柱のことを思うと、そう思わざるを得ないのです。
加子母の森へ
加子母ヒノキは、日本人の心の寄り代です。私たちは、加子母ヒノキが、都会の多くの家々に息づくことを夢見ています。それは必ず、日本人の魂の力を呼び起こすことに成ると信じるからです。そして、これが私たちにできる日本復興のビジョンなのです。・・・さあ、加子母の森へ行きませんか。